消しゴムはんこの作り方_実践編_第6回_アルパカ・スリ(けものフレンズ)
[今回のテーマ]アルパカ・スリ(けものフレンズ)
たつき監督の騒動の件で2期が心配されるけものフレンズですが、今回は無事に2期が完成してほしい思いもこめています。今回の作品として選択したフレンズは、第3話『こうざん』に登場した『アルパカ・スリ』(以下、アルパカ)です。
ちなみに私はpixiv百科を見るまでは、アルパカの訛り口調が声優のアドリブであること知りませんでした。
原画はpixivにて『さっこ』さんからお借りしました。
【けものフレンズ】「アルパカ・スリ」イラスト/さっこ [pixiv]
湯気の境目をどこにするか
今回の作品の一番の悩みどころは、紅茶から出る湯気の境目をどこにするかです。原画を見てもらえればわかりますが、この湯気は紅茶表面では透明(白?)で、てっぺんに行くほど色がついていきます。
毎回消しゴムはんこ作りを悩ませる要素の1つ、グラデーションカラー部分と考えてもいいでしょう。とくにインクを1色しか使わない手法では、この境目をどこに持ってくるか考えないといけません。
ですが、『完璧な正解』ありません。現実的に再現が困難な場所への対策は彫り手によって違います。作りの手の数だけ表現があるのも消しゴムはんこなのです。
今回はアルパカの手元をあえて曖昧する方法を採用しました。
縦方向の描画範囲に注目
お借りしたアルパカの原画は、比較的縦方向の描画範囲の短い作品になってます。ほぼ正方形に近い形としてみてもいいでしょう。
通常縦方向は転写絵の線に手が触れやすいので、下から上に彫りむことで安全圏を確保していきますが・・・今回は消しゴムの外側からあらゆる向きにデザインナイフを伸ばし易い形状になっています。
ただし、基本編で説明した得意方向の問題もあるので、必ずしも安全圏の位置取りができるわけではありません。場合によっては消しゴムの上に手がくるので、線に触れないように注意しなければなりません。
彫り進むときの位置取りが、いつもより難しくない程度に考えておきましょう。
難しい箇所の作業は先行するのも有り
ある程度の基本的な彫り作業の流れは決めているのですが、これは必ず守るものではありません。時間がたつと判断に自信がなくなる箇所、作業上の流れから少し離れているけど・・・そこに難しい箇所がある場合は先行する判断も有りです。
安全圏確保が出来ていないので、油断すると転写絵の線に手が触れることだけ意識してください。
アルパカの作業でも『カップと持つ手元』と『髪のモフモフした箇所(肩付近)』は、通常の作業の流れを無視して先行しています。
手元のカップは『消えてしまった線、または薄い線』と後から勘違いしないように先行しました。その日のうちに作業できればいいのですが、時間の都合上後日になった場合・・・自分で描いた線の意味を忘れることがたまにあります。
記憶違いでミスをしない為に先行しました。
では肩付近のモフモフをなぜ先行したのか?単に面倒な箇所だったからです。そこそこ面積が有りそうで簡単に見えます。しかし、中の模様が邪魔をして小刻みな彫り方しかできないので時間がかかるのです。
通常なら髪は最後にすることが多いです。けれども今回は、最後に面倒な箇所をまとめたくなかったので先行することにしました。
見た目は簡単そうでも後から落ち着いて見た場合、または実際に作業した場合に意外と時間がかかることが判明するというのは、消しゴムはんこではよくあることです。
口元の両端は僅かに膨らんでいる
転写絵を作りこんで、転写が上手くできている場合はそこまで問題ではありません。ですがこの工程がミスしている場合、記憶だけを頼りに再現しては間違えることがあります。
作業前に原画で確認すれば気がつくかもしれませんが、見落としや記憶違いしたまま進む可能性も否定できません。注意が必要な箇所の転写絵はしっかり作っておきましょう。
耳のモフモフは横着禁止
アルパカの耳のモフモフした箇所は髪のモフモフした箇所と似ています。違うのはギザギザにとがっている点です。獣耳があるタイプのキャラクターによくあります。
今まで何度か出てきても解説していなかったので、この機会に解説します。このようなギザギザした外形は線を繋げて彫ってはいけません。特とくに後半に作業する場合は焦りや油断で横着したくなるでしょう。
でもここで繋げて彫ってしまうと、このタイプの線は押印面の面積が欠けることがあります。三角形の形を切り取るように少しずつ彫りましょう。
髪の影が足りない?
髪の影が気になり、作業中に追加している箇所があります。
追加と言っても・・・気にしなくてもいいレベルものだったかもしれません。
明らかに間違いである場合は彫る前に修正したほうがいいでしょうけど、今回ほど細かい修正になると個人の拘りの問題でしょう。
作業中の修正行為そのものは珍しいことではないので、間違い以外にも違和感を感じた箇所は修正しておくと自分らしい作品になるのではないでしょうか?
サラエを使うのは残った余白だけ
アルパカ本体をとりあえず彫り終えたら、周囲の余白を切り離します。いつもの流れならキャラクター周囲に残った余白とキャラクターの中の面積が広い部分にサラエを入れて、凹凸を均します。
今回のアルパカはキャラクター内の線の感覚が押印時に変形しにくいように配置されているので残った余白を均すだけで十分でしょう。無理にサラエを入れて押印面を壊したくないという理由もあります。
あとは押印テストのときに写ってしまった不要突起だけを除去すればいいでしょう。
今回の注意点まとめ
最大の難所は予想通り、湯気のグラデーションの境目でした。手元をぼかすことで境目を表現しましたが、思い切って中央より上で境目を表現した方が良かったかもしれませんね。
長く境目を引っ張るよりも、短すぎるくらいに切った方が消しゴムはんことしてはわかり易いように思いました。
それと今回は転写絵の重要性を改めて感じた回でした。アルパカの口元のような線は記憶頼みにしないで、転写した線で分かるようにしておきたいですね。
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