消しゴムはんこの作り方_実践編_第10回_瑞鶴(アズールレーン)
[今回のテーマ]瑞鶴(アズールレーン)
今回原画として使用するのは、『びーびー』さんのpixiv投稿作品『瑞鶴』です。
【アズールレーン】「瑞鶴」イラスト/びーびー [pixiv]
スマホゲーム『アズールレーン』に登場するキャラクターで、実在した空母『瑞鶴』がモチーフになっているキャラクターです。
『アズールレーン』では日本艦をモチーフにしたキャラクターは、ケモノ耳や妖魔のような角が身体的特徴として表現されていることが多い中、瑞鶴はキャラクター本体のデザインが限りなく生身の人間に近いデザインになっています。
着物はよく見ると、鶴の羽模様のようなものが描かれています。これは姉妹艦をモチーフにした『翔鶴』も同じです。残念ですが今回は、はがきサイズの専用消しゴムに収めるために、鶴の模様の最も目立つところをカットすることになりました。
今回の原画は萌え要素というよりも、カッコよさが重視されたデザインだと思います。
瑞鶴に混在する濃度の異なる影への対処
まずはいつも通り転写絵を作るのですが・・・濃い影と薄い影が混在しているので、1色のインクでこれをどう表現するか悩みました。
通常、転写絵への影付け作業は原画のまま行うと主線の境界線が分からなくなるので、根本的に配色を考えなおします。しかし今回は、ただ配色をやり直すだけでは難しそうです。
そこで今回は、『影が全体的に濃く存在する』と考えて配色しました。
現実的に彫りにくい線や模様を省略するほか、このように『発想を変える』=『仮定する状況を変える』ことで、はんこ化を可能にしていくのも方法の1つではないでしょうか?
瑞鶴の彫り始めは安全圏がない!?
専用消しゴムに転写された転写絵を見てもらえれば分かる通り、今回は構図の関係でかなり多くの線が消しゴム内に描きこまれています。とくに上と左側がかなり詰まっています。
正位置で消しゴムが動かないのなら、(右利きにとって)常時右側が安全圏になりますが、現実問題、彫り易い方向に消しゴムを回転しながら作業するので、常にここの安全圏は使えません。
ここまで絵がびっしり詰まっている状態で安全圏を考えて彫るのは難しいです。しばらくは安全圏がないものとして、彫り易い場所から彫りましょう。とにかく彫り終わったスペースを広げていきます。
安全圏が封印された中での作業になるので、いつも以上に転写した線に手をつかないように注意してください。
比較的広い右下から彫るのが彫りやすいでしょう。文字は面倒ですが、大きさ的に難しくはないので最初にこれも含めて作業します。
文字を彫る場合は文字周辺を簡単に彫って、見た目の作業残り範囲を狭めておくと作業し易いです。文字周辺を彫るときには、文字から逃げすぎないように。少し攻め過ぎるくらいがちょうどいいです。
文字の中については、ここではあまり神経質にならずに『とりあえず中を彫った』程度でいいです。あとでインクをつけるまえに、トレーシングペーパーの転写絵を裏返して形状をよく見ながら、『トメ』『ハネ』を仕上げます。
実際、私も今回は押印テスト前にこの方法で仕上げています。
なので現時点で優先するのは、『作業済みエリアを広げる』ことです。消しゴムの右側を全体的に彫り進めていきましょう。
瑞鶴の右側にできた安全圏を使って作業を続けよう
ある程度まで彫りこむと、画像のような安全圏が見えてきます。瑞鶴の右側・・・消しゴム全体の約半分が安全圏として利用できます。
※左利きの場合は瑞鶴本体から彫るか、180°回転させた状態を正位置としたほうが作業し易いかもしれません。(180°回転=瑞鶴の文字が左側にくる)
消しゴムのはんこの左側、作業台の上も安全圏なので、左右に縦長の安全圏ができたことになります。
この先は足から顔に向けて彫っていくことにしましょう。部分先行しないように均等に・・・と言っても現実問題難しいので、迷ったら右側のパーツ優先で彫り進めていくことにします。
安全圏が周囲にできた瑞鶴の本体
消しゴム下側から彫り進めていると、今度は瑞鶴を囲むように安全圏ができてきたことに気づくでしょう。比較的描画範囲の狭い原画から作る作品では、よくみかけるパターンですね。
画像の未作業エリアから考えると、左腕と下半身を彫ってしまえば、より広い安全圏が周囲にできることになります。
ここまでわかり易い安全圏が広がってくると、作業性も良くなり、気分的に楽にもなってきたと思います。
あとは『慢心からの失敗』に注意して残りの未作業エリアを彫っていきましょう。
殆どサラエのいらない瑞鶴の仕上げ
一通り終わった後はサラエで仕上げるのがいつものパターンです。けれども今回は、不要な押印カ所を出してしまうほどの広い面積のパーツが殆どありません。
押印時の圧はほぼ均等に広がり易いと思います。今回のサラエ入れは、瑞鶴の文字周辺の余白以外なくても問題ないかもしれませんが・・・予想外な凸部が生き残っているかもしれないので、押印テストでの確認作業はした方がいいです。
私の場合は見た目的に気になる場所は均しました。ここまでする必要はありません。見た目を気にした追加作業の場合は、瑞鶴の線を壊さない程度にサラエを入れていきましょう。(要約:無理して壊ちゃダメ)
瑞鶴の押印は気泡注意
今回は『影』=『彫り残しの多い』作品です。このようなケースだと彫り残し部分に気泡が貯まりやすく、押印したポストカードに気泡の跡が出てしまったり、インクの濃度にムラがでてきます。
基本講座に出てきた『エア抜き押印』も有効な手段ですが、もう1つの対策として『何度か捨て押印をする』のも有効です。何度かインクを塗り直すうちに、インクが消しゴムはんこの表面に馴染みやすくなります。
インク濃度が安定してきてから、本番の押印といきましょう。
ただ、この手の作品は丁寧に押しすぎるよりも、あえてムラが少し残った方が雰囲気がでるのではないかと思います。
安全圏をなかなか出してくれなかった瑞鶴
今回の瑞鶴は、安全圏をある程度作るまで時間がかかりました。彫り慣れていない人は、何度か手をついて線を消してしまうかもしれません。
私でも未だに『あ・・・いまの触ったかな?』と思うことがあります。でも、触れても『線が完全に消えなければ』続行は可能です。
『触れた』と思った場合は焦らずに真上に腕を上げます。そうすることで被害を軽減できることがあります。軽くこすってしまった場合でも線が薄くなった程度なら、転写絵か原画を見て鉛筆で引き直せます。
大きなミスが起きそうになったときほど落ち着きましょう。思っていたほど被害がでていなかったこともよくあります。
それでも、もうどうにもならない状態になることもありますが・・・そういうときは、時間や日を置いて、落ち着きを取り戻してから作り直しましょう。
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